かまぼこを切ったら切断面を中心に無色の納豆のような糸をひく状態がみられた。

無色透明なネトは無包装の比較的糖分の多いかまぼこに発生しやすい。
最初は表面に点々と水滴がついたような状態で透明なネトが生じ、次第にその数を増し、ついに表面全体を覆うようになる。 特に、臭いも味もほとんど変わらないので、これを拭き取ってしまえば食用可能であるが、現在ではそのような処置をする消費者もなく、商品価値はなくなり、この現象が腐敗現象の一種であることには違いない。
これは、Leuconostoc mesenteroides という乳酸菌の一種が、加熱後に付着生育したために起こる現象であり、この菌は砂糖からデキストランという多糖類を作る性質があり、生じたネトはデキストランである。 デキストランは血清の代用などにも使われる物質で、無害の物質である。
最近では、こうした典型的な無色、無味無臭のネトを見ることは少なくなったが、包装度の比較的低い商品では、高温多湿の梅雨時期にみかけることがある。
その他に、赤いネトが発生する場合があるが、これはSerratia marcescens という腸内細菌に属する短竿菌の一種が加熱後付着繁殖したために起こる現象である。この菌は分裂速度が非常に早いので、まだとても腐敗しないような新鮮な時にこのネトが発生する場合もある。
また、表面にコロニーを形成してネト(粘質物を生成しなくても)を発生するものの中には、灰白色、乳白色、白色、黄色、淡黄色などさまざまな色調を呈するものがあり、その形もさまざまである。 その原因菌は砂糖を含む製品では Streptococcus,Micrococcus などが多く、無糖製品では、Micrococcus,Flavobacterium,Achromobacter,Bacillusなどが生じやすい。
これらはいずれも、加熱後二次汚染されたものである。